久しぶりに青春期に於ける等身大の物語に出逢えた気がした。幼少期の傲慢ぶりも、初めての恋愛、その胸のときめきと心掻き乱す感情も、自己嫌悪に陥るような挫折感も、誰もが、かってどこかで思い当たる節があるであろう高校時代の心の揺らめきばかりだ。
一人称、自分目線で“自己にとっての真理”が語られる。ニーチェ、サルトル、ゲーテを愛読し、唯我独尊だった思春期の少年。嫌味なヤツだなと読み進めるうち、これって自分じゃないか、と思えてきた(苦笑)。
高校の音楽科が舞台なだけに、専門用語が多数出てくるが、楽器やクラシックをかじってなくても楽しめるし、主人公たちが、ひとつの楽曲を合奏、協奏していく過程に於いての混乱、動揺、焦燥と奮闘、躍動ぶりは、音楽的素養のない者にも、まるで自分たちが当事者としてその場に居合わせているような臨場感と充足感を感じる。
「僕たちの人生の主役は音楽で、音楽の、この絶対的な美しさの前では、僕らの喜びや悲しみ、怒りや苛立ちなんて、ほとんど意味がない」、なんてフレーズを臆面もなく語らせてしまう無垢の尊大さと、夢中に打ち込める対象を持てる純粋さ。せめぎ合いの協奏が、いつしか恋愛表現に転じていく高揚感と幸福感。
そして、僅かながら場面をさらう金窪先生。そうだ、確かに倫社なんてウチの学校でも何もやらなかった。教科書だけ配布されて、何の関心も抱かなかった教科だが、でも、こんなコンセプトで授業を受けられたら、どんなに楽しかった事だろう。
期待を以て、PART2へと進みたい。