幸田真音さんの経済小説。主人公のモデルはサンモトヤマの茂登山長一郎さんで、戦後の闇屋から絢爛たるブランドビジネスを育て上げる痛快小説だ。主人公「茂里谷」が若い二人に語り聞かせながらストーリーが進むところから見て、実質的には茂登山さんの自伝に近い。それを400ページも一気に読ませるところが、さすがは幸田さんの筆力だ。経済知識も確かなので読みやすい。
読んで圧倒されるのは主人公のバイタリティ、そして常に先の手を打つ経営者としての手腕。美しいものを扱いたい一念でエルメス、グッチの代理店契約を獲得していく執念は、ビジネスマンとして見習いたいところ。
また本書はブランドビジネス隆盛の歴史を語る一方で、警鐘も鳴らす。希少性を捨て沢山の手垢が付けば、最早高級ブランドではなく、大衆化したことになる。まぁそれでも今日、多くの日本人がグッチのバックを持ち歩くようになって、それなりに日本人の美意識も進化したといえるのかもしれない。捨てた部分もあるのだろうが、その辺は本書では語られない。