この本の初版本は1972年。以来、読み継がれて来ている本です。初版が発行される前年、昭和46年、著者、松原泰道氏の寺、龍源寺では、月に1回、紀野一義先生の講話がありました。いつも感動のあるお話でした。そうこうしている内に、松原氏が初めて本を書き、これが爆発的にヒットしました。
松原氏の「般若心経入門」は、般若心経そのものというよりも、このお経を縦糸にして、氏の人生観、考え方を織り上げていったものと言えるでしょう。
正確な「般若心経」を学びたい方は中村元先生と紀野一義先生、共訳の「
般若心経・金剛般若経 (岩波文庫) 」を読まれるといいでしょう。(中村元先生、紀野一義先生は東京大学のインド哲学科での師弟の関係です。)岩波のこの「般若心経・金剛般若経」は、翻訳者の主観が入らないような配慮がされていて、自分で読み解くための素材が提供されています。ただ、この「般若心経・金剛般若経 (岩波文庫) 」をいきなり読むとなかなか理解が難しいです。そんな方は、紀野一義先生の弟子が書いた、こちらの
「岩男潔著:般若心経物語」を先に読んでおくといいでしょう。般若心経の根底となる「空(くう)」と「色(しき)」の関係について明確に解るように説明しています。著者、岩男潔氏は「紀野一義先生の弟子を名乗りたいけど人間が立派でない等の理由で名乗れない」と書いていますが、「空(くう)」を本当に解りやすく正確に説明しています。その解りやすさは他のどんな般若心経解説本も足元にも及びません。
で、松原泰道氏の「般若心経入門」ですが、あくまで松原氏の人生観、考え方を述べている感が強いです。その考え方が多くの人々の共感を生み、今日まで長く沢山の人に読まれて来ているのでしょう。
立花隆氏が自分の読んできた本の中で、人々へのお薦めの本として、いろんな本を挙げていますが、仏教のほうでは、柴山全慶師と紀野一義師の本だけです。寂しい限りですが、立花氏の見方は正しいでしょう。本当に感動があり、本当に大切なものが書かれているのは、このお二人の本と言えるでしょう。ただ、松原氏の本も人々の共感を得るよいところは沢山あります。