第104回文學界新人賞受賞作である表題作「舞い落ちる村」と「冬待ち」の2編が収録されている著者初の短編集。両方の短編を読み終えて感じたのは、時間から切り離され、両方の短編の中に結晶化されて囚われた感覚だ。ボルヘスや山尾悠子へのオマージュとして捧げられた2編は、読者の心を捉え、決して離すことはないだろう。
2編ともに端正な文章からは想像できないような、サルトル的な嘔吐感を感じさせる。自分自身が脱出不可能な壁に四方を囲まれた閉塞感、すなわち閉集合の中に渦巻く混沌とした内的神話世界に囚われてしまったことにある。そういった意味では、マトリョーシカ構造を感じさせる作品といえばいいのだろうか。空間的な広がりと内的な世界の広がりの中にある永遠の薔薇の世界、計算されて書かれた大変理知的な短編だった。両短編とも様々な読み方が可能、という意味でも多面的な読み方も可能なので、ぜひこの素晴らしい短編集を買って読んでみてほしい。