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興奮 (ハヤカワ・ミステリ文庫 (HM 12-1))
 
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興奮 (ハヤカワ・ミステリ文庫 (HM 12-1)) [文庫]

ディック・フランシス , 菊池 光
5つ星のうち 4.6  レビューをすべて見る (8件のカスタマーレビュー)
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商品の説明

出版社/著者からの内容紹介

〔競馬シリーズ〕最近イギリスの障害レースでは思いがけない大穴が十回以上も続出した。番狂わせを演じた馬には興奮剤投与の形跡が明白であったが、証拠が発見されなかった。そこにはどんなからくりがあるのか? 事件の解明を依頼された牧場経営者ロークは、厩務員に身をやつして、黒い霧の調査に乗り出した!

登録情報

  • 文庫: 378ページ
  • 出版社: 早川書房 (1976/4/20)
  • ISBN-10: 4150707014
  • ISBN-13: 978-4150707019
  • 発売日: 1976/4/20
  • 商品の寸法: 15.2 x 10.6 x 1.6 cm
  • おすすめ度: 5つ星のうち 4.6  レビューをすべて見る (8件のカスタマーレビュー)
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By カスタマー
本書のストーリーは、オーストラリアの牧場主が、英国障害レースの理事に依頼されて渡英、馬丁に身をやつして、馬の異常興奮に絡む八百長事件を捜査するというもの。本書もコンゲーム的トリック付きなので、言わば、割とミステリーの体裁が整った代物であるし、また主人公の決意の理由は要するに「内なる血が騒ぐ」というやつだから冒険小説的味付けも効いている、というオーソドックスで堂々たる作りの小説になっているのである。

まずこの本の最大の魅力は、かくもストレートなプロットを、よくぞここまで書き切ったものだ、ということ。ぼくは正直言って前半部では、主人公の動機が無茶に感じられたことなどもあって、その地道で忍耐強い行動そのものに首をひねってしまったたものだが、問題の牧場に乗り込んでからが、言わば「あしたのジョーが特等少年院に送られた」時のような雰囲気で、突如佳境に入っていくのだ。

主人公は内なる誇りを隠し、悪辣でいやな男を演じねばならない状況であるのだが、こういった時の心理描写が凄まじい。このまま自分が、演じている男そのままになってしまうのではないか、と恐怖を感じたり、自分の言動や周囲の視線に、耐え難いほどの絶望を感じたりする描写は、プロの冷酷なスパイ小説では味わえない醍醐味がある。この辺の独白が素人の女々しさと言われればそうなのかもしれないが、逆に自己の魂との相克が見せ場となり、むしろそれ自体作品の魅力となっていることは否めないはずである。しかも常に逃げ出すことのできる状況で葛藤しながらも、己れの今後の生きざまにさえ賭けてゆく主人公の心積りは、既になまなかのものではない。

フランシスならではのカタルシス。耐えに耐え、内なる闘志を研ぎ澄まし、最後にきっちりと落とし前をつけてくれる男の物語。これらを確かに表現してゆく、魅力的に抑制された一人称の文体。

文句なしに傑作ではなかろうか。

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6 人中、4人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
By 紫陽花 VINE™ メンバー
D.フランシスの「競馬」シリーズの代表作。D.フランシスは元競馬騎手で、引退後そのキャリアを活かしてこの道に入り大成功を収めた。作品の内容は当然競馬に関するもので、八百長、馬のすり替え等、競馬に絡む黒い霧をストイックな探偵役が解明していく展開。探偵役としては、元騎手等が選ばれ、いずれもマゾとも思える精神的・肉体的苦難に対する耐性を初めとする数々の障壁を乗り越える姿が売り物。

本作は題名が示しているように「興奮」剤を用いて不正に勝利を収めている馬主を、主人公の牧場主ロークが厩務員に身をやつして艱難辛苦の末追い詰めていくというストーリー。題名で「興奮」と示してあるように不正者が興奮剤を使用しているのは明らかなのだが、その方法が分からないのだ。ロークの捜索の過程は、さすがに作者の経歴上ウラのウラまで精緻に描かれている。ロークも窮地に陥るが、他作の主人公同様、ストイックな不屈の闘志で切り抜けて行く。この辺がシリーズの人気の理由であろう。興奮剤の用い方は良く考えられており、本格の味もある。

本作は、主人公のストイックなまでの精神力と興奮剤使用の謎解きの構成の巧みさによって、読み応え満点の出来になったシリーズの最高傑作。
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3 人中、2人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
“ターフを走るサスペンス”、ディック・フランシスの<競馬>シリーズ。’62年、デビュー作である『本命』で始まったこのシリーズは、’10年2月14日にフランシスが逝去するまで、晩年の5作品は次男フェリックスの協力を得ながらも全44作に及び、すべて邦訳されている。MWAベスト・ノヴェルは前人未到の3回、CWAゴールド・ダガー賞1回、次点1回の受賞に輝き、自身も’73・74年CWAの会長をつとめ、’89年度CWAダイヤモンドダガー賞、’96年度MWAグランド・マスター賞(共に巨匠賞)を受賞、英国におけるミステリーの大御所であった。

本書は’65年発表のシリーズ3作目にあたり、同年CWA次点(現在は廃止されているが後のシルヴァー・ダガー賞、ちなみにその時のゴールド・ダガー賞はロス・マクドナルドの『ドルの向こう側』)を受賞し、一番初めに邦訳された作品。早川書房の『ミステリ・マガジン』のアンケートをもとに’92年に刊行された『冒険・スパイ小説ハンドブック』において、「冒険小説ジャンル」で堂々第6位にランクインした。

英国の障害レースで“大穴”が10回あった。明らかにノー・マークの馬に興奮剤が与えられた徴候が見られたが、検査の結果はシロ。理事会のメンバーであるオクトーバー伯爵は、はるばるオーストラリアまでやってきて、27才の若き生産牧場の経営者‘私’ことダニエル・ロークに不正の真相究明を依頼する。探っていた競馬専門の新聞記者も謎の交通事故死を遂げたという命の危険も伴う依頼を口説き落とされて受けた‘私’は、牧場の厩務員に身をやつして潜入捜査を始める。

ストーリーは、‘私’の4ヶ月にも及ぶ活動が描かれるのだが、その巧緻に長けた細工を見破るまでの道筋もさることながら、真相にいたるヒントといい、そして悪事を暴いた後のアクションといい、意表をつくエンディングといい、実にサスペンスフルでスリリングである。私はハラハラ・ドキドキのスパイ・スリラーか胸躍る冒険小説でも読んでいるみたいな感動を味わい、まるで何かに取り憑かれたかのように一気に読んでしまった。
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