自閉症の「認知様式」にスポットを当てた本です。
自閉症は脳に病因をもつ発達障害なのですが、現実場面で自閉症者がどのように振舞うかということについては専門家でもないかぎり、「脳障害」という点から理解・予測することは難しいはずです。
脳に障害があると、認知機能面でどのような影響が現れるか。著者のハッペらは「心の理論の障害」や「中枢性統合の障害」といった仮説によってそれを説明しています。
私見では、自閉症の心理理論は直接治療に直結することはないと思うのですが、現実場面で患者がどう行動するのかを適切に理解・予測することに関しては大変有用であると思われます。自閉症には特異なコミュニケーション障害が見られますが、どうしてそのようにコミュニケートするのかということを「なるほど、彼らには世の中や物事がこういう風に見えているんだ」という洞察によってある程度理解が可能になるのではないのでしょうか?
つまり脳→行動といったルートは予測が難しいので、そこに「認知」を媒介させることで行動の予測を容易にします。健常者同士でも、普通、相手の行動は「何を考えているのか、何を感じているのか」といった観点から理解していますよね。
また自閉症によって障害される「心の部分」というのは人間の社会性にとって不可欠の部分だと思われます。したがって、こうした症例を知ることによって、それと対比的に自己理解も深まるのではないでしょうか。そのようなわけで、自閉症それ自体にはさして関心がない方でもなかなか興味深く読めると思われます。