以前、岩波文庫で読み、あまりの面白さに昼夜を忘れて読んだ記憶がある。このたび、映画になるということで再度手に取ると、まあなんという悪訳。初読のときはストーリーに引っ張られて没頭できたものの、再読になると、訳文のあまりの生硬さに読むに耐えない。そこで、定評のあるこの中野訳を購入。うむ、まさに評判どおりの名文。まるで日本の小説を読んでいるかのように、という比喩は適切かどうか分からないけれども、ともかく、するすると頭に入ってくる。
昔の記憶では、ダーシーとエリザベスはともに強いプライドがあるせいで互いに偏見を持ってしまったものの、ウィカムの事件をきっかけに偏見がなくなる話だった。もちろん、それは間違いないのだけれど、再読して思ったのは、ウィカム事件の後は、偏見がなくなったのではなく、新しい(好意的な)偏見が互いに生じたのではないか、ということ。そしてそれを生じさせたのは、エリザベスのプライドをくすぐる、ダーシーの告白だ。逆もまたしかり。自負と偏見は、この小説の端々に横溢している。名作たる所以なるかな。