筆者の「兵士」シリーズは自衛隊のルポの最高峰と言える完成度を持っていると思うが、本書はそれに遠く及ばないというのが率直な感想だ。これまでの「兵士」シリーズの取材の中のやりとりを一部抽出して組み合わせ、「自衛隊が危ない」として自衛隊に警鐘を慣らしている。「兵士」シリーズでは自衛隊の問題点を記しつつも、それを温かく見守る応援団のような観点が存在していたのだが、本書ではそのような観点は前面に打ち出されておらず、ここが「兵士」シリーズとの最大の違いと言えるだろう。また、「兵士」シリーズが一般の自衛官とのインタビューを基に書かれた作品であるのに対し、本書は田母神元航空幕僚長やいわゆる背広組の幹部とのやりとりが重要なソースになっている。若干穿った見方だが、田母神氏とのやりとりが筆者に本書を書かせた大きな要因であるように思えてならない。
自衛隊に対する鋭い洞察は本書でも健在である。しかし、そもそも「兵士」シリーズの白眉はこのような洞察なのであって、本書は「兵士」シリーズから、膨大な数の自衛官とのやりとりを大幅に削除したものに過ぎないとも言える。「兵士」シリーズに価値を加えるどころか、単に「兵士」シリーズをスリムにしたものにしかなっていない。最悪なのは、S士長の話など、「兵士」シリーズで使ったネタをほぼ同じ文言で使い回している点である。こういうことはしてはいけない。