筆者は自衛隊が軍隊として備ええているはずの各種法規がないこと、保有兵器が我が国の地政学的事情を踏まえて整備されていないことを、海上自衛隊の事例を材料に指摘する。その上で、かくも「戦えない」組織では、精強な部隊は作り得ないと、上級幹部を中心とする現状を批判する。本書の指摘は、交戦規定ROE整備の必要性や防衛機密の強化、上級幹部の教養充実の必要性など、広範かつ的を射たもので、一部書評子が批判する「独善的」「軍事知らず」という指摘には賛成し難い。それは、参考資料一覧を見ても、旧軍の資料から最新のものまで網羅していることでも窺えよう。軍事力とは国家の体外政治(外交力)の一手段であることを考えると、その力を行使するための法規(ルール)が整備されていない現状は、個別の兵器の性能を議論する以前の事態であることを、筆者は指摘する。したがって、読者には個別の項目への意見はさておき、まずは一読することをお薦めする。自衛隊が、そもそも戦闘組織の体をなしておらず、現場のプロたちが、必死になって「それでも有事には対応させる」よう奮闘している姿が理解できるだろう。