人々はよく独立することをよしとしますが、長老は意図も簡単に「生命は依存している」とおっしゃっています。完全な独立はありえないのだから依存を「相互依存」に変えるのが本書の試みです。
相互依存とは社会から受けた恩恵を返還することに似ています。つまり、社会に対して貢献することでようやく関係が保てるのです。たとえば、ボランティアの正しいやりかたとして「苦しんでいる人々を助けてあげて、それによって自分もエゴをなくすのだとはっきりしているならば、大きなお世話のボランティアにはなりません」(p201)という箇所は恩着せがましくなってしまう私にとって耳が痛くなるお言葉です。ですが常に世間的な生き方では完全な独立はありえないということを肝に銘じておかなければなりません。
そこで、本当に束縛から離れるために仏教があります。お釈迦さまは「いかに自分に頼って、法に頼って生活」するために自己観察する修行を説きました。まず、身体と心の動きを観察し、それから真理を発見する過程を、経典では四念処(身・受・心・法)という。(p121)
自己観察始めると次のような利点があります。
「しっかりした不動の固定観念、先入観になる檻をつくるのではなく、つくった檻を破「心の自由と安らぎを感じる」「無知が消える」「無知が減ると同時に、本当の自由も現れる」(pp123-124)
長老は
「自由とは『なるもの』です。…世間でいわれる自由、つまり『得る』自由は、存在そのものです。家族、財産、健康、長生きーこれらは…無常で消えるものです」(p126)
とおっしゃっています。世間的な自由はいかにはかないものかを知るには十分です。
本書は全体として、「自立への道」とはすなわち私たちが依存せざるを得ない母体に対する負担を限りなく減らすための「仏道へのいざない」というような印象を受けました。したがって、孤独を恐れる依存症の傾向がある人には特にお薦めです。