本書のタイトルには「心理学」の文字が見られるが、扱われている事柄の性質上、どちらかといえばジャーナリスティックな仕上がりとの印象を受ける。
「身に覚えのない犯罪を告白する」という心理は、通常の生活状況に置かれたわれわれには想像すらできないことであろう。本書は、公権力を前にして、そうした状況へと人が追いやられてしまう心のメカニズムを説いたもので、実際にこれまでマスコミで話題になった数々の冤罪事件を例に解説を加えて行くという体裁を取っている。
本書のメッセージが学問的な関心を越えて、社会を生きるわれわれに強く語りかけるのは、自白と冤罪に関する冒頭での筆者の強い問題意識を基礎として話が展開されて行くからであろう。自白至上主義ともいえる現在の警察の体質がいかに簡単に冤罪事件を生み、一度この循環に乗ってしまえば、今度は無罪を勝ち取ることがどれほど困難であるかについて、心理学者の視点を交えて明らかにしてくれる。
難しい専門知識は必要ない。本書を読めば、世の中に対する関心を持たれている方であれば、素直に自白へと人を導くメカニズムが理解できるではずである。また、代表的な冤罪事件の背景についても詳しく記述されているので、そちらの方に関心を持たれている方にも役立つ一冊であろう。