ある男が、ばね会社跡の廃屋を借りて、当てもなく掃除し改装を考えるという話です。それ以上でも以下でもありません。
ドラマチックな展開は何もなく、特別な事は何も起きず、淡々と始まり淡々と終わります。新しい人物が次々と登場し、何か起きるのかと思いきや、何も起こらず、最後に何か仕掛けがあるのかと思いきや、やっぱり何も起こらないという…。
では、何が評価出来るのかと言えば、文章そのものということになります。
冒頭から、会話文の少ない説明だらけの文章が延々と続きますが、特徴的な文体と、独特のリズムを持った文章によって読みにくさがかなり軽減しています。
とは言え、序盤から長々と繰り返される「柿渋と鉄粉」の説明、その他、専門用語がこれでもかとばかりに繰り出されるため、起伏の無い展開も相まって、読み疲れること必至でしょう。
文章の組み立て、独自の文体、写実的な説明は評価しますが、それだけです。 物語として構築しきれていません。
本書を未読の方には、最初の数十ページを読んで自分に合わないと思えば、それ以上、読む必要性は低いということをお伝えしておきます。
従来の文学から起承転結を取り除いたかのような淡白な描写は、物語としては圧倒的に退屈でしたが、小説に何を求めるかで賛否の分かれる作品だと思います。