般若心経については現在柳澤桂子氏における訳本が版を重ねている。訳については仏教学的には少々問題があるとはいえ、それをあまりある自分自身の体験に裏打ちされた「空」に対する理解により名訳といってよい。
しかしながら、この本に対しては読了後、私は柳澤訳の書籍ほどの感動を覚えず、むしろ自由訳という名の下に般若心経の主張を破壊してしまっているとしか思えなかった。
般若心経とは「空」とは何かを論じる経典である。他には何も論じていない。にもかかわらずこの著者は自由訳の名の下に「宇宙銀河」や「この世における役割」だのといった全く般若経のテキストと関係ない論点を挿入してしまっている。これらの論点を扱うのは「華厳経」であり般若経ではない。
あとがきを見る限りどうやらその挿入した部分こそ著者が主張したいことらしい。だったら般若心経ではなく華厳経を自由訳の対象にすべきだったと思う。