上杉は冒頭の「3.11で見えた記者クラブの終焉と自由報道協会の使命」の中で、既存マスコミによる「洗脳」という言葉を使っていますが、私は「隔離」だと感じました。権力側にとって都合の悪い問題からの隔離です。その問題自体を隔離することは、視点を反転させれば国民を隔離してきたことと同値です。上杉は自由報道協会発足の理念で「多様性のある報道」の大切さを訴えていますが、ネットの言論空間から様々な情報を仕入れた方は多いのではないでしょうか。17頁から32頁にかけては震災や原発事故の写真が掲載されています。
本書は大きく3章から構成されています。
第1章「震災&原発事故報道の最前線」では神保哲生や岩上安身はじめ8名のジャーナリストが、3.11を契機に明らかになってきた既存メディアの報道課題について歯切れのよい告発をすると同時に、ネットメディアの活躍を印象的に記しています。
第2章「震災を追い続けた”多様な視点”」は一番興味深く読みました。12本のルポが収録されていますが、そこには今後の被災地の復興のヒントが沢山掲載されています。災害時のインフラや医療体制、産業復興の課題等、「現場」からの視点が多く盛り込まれています。翌日に発生した長野県栄村の地震のルポもあります。
第3章「メディアの功罪とこれからの可能性」では、上杉が今まで主張してきた言説が、他者の言説によって強化されています。212頁から本書に関わる著者たちが座談会形式で3.11の振り返りをしていますが、それぞれの著者が自分の仕事に自負と責任を感じながら取り組んでいる様子がうかがえます。「お金」よりも「真実」を追う姿に頼もしさを感じました。
最後に、本書の印税は全額「被災地支援プロジェクト」にまわされるそうですので、多くの方に読んでもらいたいと思いました。