この人の書くものを読むと、いつも議論のねばり強さに圧倒される。しかも昔より読みやすくなってきている。「私が作ったものが私のものであることを認めることができない…財のすべてが、またその人の生産した財のすべてがその人の存在に関るとは考えない」という「私的所有」への懐疑論の構図が、だんだん見やすくなっているのだ。「思想」の進化である。ご本人は「簡単で当り前のことを、ずっと言い続けているだけ」というだろうが、しかし彼の論述が難解なのは明らか(?)である。それでも同じ主張を微妙に発展させながらくり返し論じているので、ポイントが明瞭になってきている。
一冊の書物として、関連文献リストとしてもすぐれている。「あとがき」にいわく、本人が全部の本をちゃんと読み込んでいるわけではないそうだが。わざわざ断っている所が彼らしいといえば彼らしい。まあ、熟読しても理解できない人間だっているのだから、別にいいんだけど。