「病院で生まれ、病院で死ぬ」という医療にどっぷり浸かった生しか考えられない時代にあって、「自宅で生まれ、自宅で死ぬ」ような「自然死」という未来(過去)からの光に照らして、医療の現在を見つめ直して行こうとするものです。
現在の「往き」の医療=病を治し健康にすると言う狭い意識の中にあるのを、老いることや、病(やまい)を受け入れた上で病院生活でない普通の日常生活を送ってゆくことや、病を受け入れるという「還り」の医療の在り方を見つめて行こうとするものです。
「老いる」「病いる」「明け渡す」と三つの章に分けるとともに、それらの受け入れがテーマになっている。
内容は医療、養育、社会問題と多義に渡っており、広範囲の単行本、週刊誌、テレビ、自己体験を持って語っている。
特に、現在の「往き」医療の批判は、何人もの医療関係者に語らせることで、「還り」の医療へと向かうことへの説得力を持たせたものになっている。
特にがん撲滅という熱狂キャンペーンを、がんを受け入れるという選択があることが、医療者らのメッセージから解題するところが凄かった。
文章は簡潔で率直、重い内容にも拘わらず、どんどん読み進むことができます。心温まる話も盛り込まれ、読みやすいものになっていると思う。