登録情報
|
我が国では、たまたま共生型の農業が実施され、水田、里山における複合型生態系が、「身近な自然」として維持されてきました。
しかし、農業の衰退に伴い、それらの良き伝統は失われ、「身近な自然」に暮らしていた多くの生物が絶滅の危機に瀕しています。
英国では、一端、農業が衰退して大量絶滅が起こってから流れが変わりました。NZでは、手遅れになる前に流れが変わりました。
日本はどちらの道を選択するのでしょうか?我々一人一人の国民が、本書を読んで危機感を共有することが、出発点なのかもしれません。
最後に、本書に関して一言苦言を。
共生型戦略に基づく里山、水田の重要性を説く箇所が多いので、本書の「自然再生」は「里山再生」だと思っていましたが、違うようです。
著者の「自然再生」は「自然再生事業」であり、霞ヶ浦の事業が好例として紹介され、制度的裏付けとして「自然再生法」が登場しています。
一つ一つの章ごとに、それぞれの思いが込められているため、うまく繋がっていないのではないかと思います。従って、星一個減点しました。
本書は自然再生の理念を、生物多様性を取り戻すことにより、人類が健全に生存できるような持続可能な生態系の創出にあると説き、生物多様性が損なわれることによってどのような問題が生まれているか、また、どのような考え方に基づいて、どのような自然再生が求められるかを具体的な事例を交えながらわかりやすく書いている。
持続可能性が脅かされる根底には「征服型対環境戦略」に基づく社会経済システムが「共生型対環境戦略」をはるかに凌駕したことがあり、その歴史はネアンデルタール人が優勢になった頃までさかのぼるような根の深いものだというのだ。人類が健全に生き延びるには「積極型共生戦略」に基づく社会経済システムへと移行することが必要であり、それこそが自然再生の目指すものであるという。
課題提示や理念的な記述に多くのページを割いているため「自然再生事業」の具体的事例分析などが少ないのが残念だが、持続可能な開発という原点に立ち返って自然再生を考えるべきというメッセージは重要だと思う。
|
|
|