書名こそ挑発的だが内容は穏健で正統派。この書名からはまるで、「自然の営みに対しては、人間活動などは影響を与えないのだ!」とでも主張されそうだが、そんな心配(?)はいらない。
途中で脱線する「日本人論」にはやや乱暴なところがあり(笑)、また、里山や水田の生物多様性への評価には異論を唱える向きもあろうが、著者の専門の生態学に基づいた生物多様性保全の考え方は、基本的には、生態学を知る大多数の人間が同意出来るものだろう。「生態系は人類のため」というのも、一部のディープ・エコロジストなどを除けば、現在の主流の考え方である。(ただそれだけに、既にある程度、生態学を学んだ人には、この本では新しい発見は少ないかもしれない。その点は残念だ。)
しかしより大きな問題は、生態学的に見れば「当たり前」で「当然」なことが、世の中全般にはまだまだ理解されていないことで、(だからこそ書名や章題などを、実際の内容以上に挑発的にする必要があったのだろう。)本来はこのような書籍は、より多くの人が手に取りやすいよう、新書本などで出版して欲しかった。
名古屋のCBD-COP10を控え、生物多様性への社会的関心も高まっているが、生態系にも生物多様性保全にも誤解が多いのは、本書の副題の通りである。ぜひ多くの人に本書のような優れた案内書を読んでもらい、正しい認識が広がることを期待する。著者が「生態系保全は人類が生態系からはじき出されないようにすること」と書いた意味を、社会の人々全般が理解している世の中になることを願う。