具体的に、植物、昆虫、微生物の利活用などの分野で進みつつある研究事例を取り上げる。
例えば、カイコが作るシルクは近年、機能性研究やナノレベルでの構造解析が進められた結果、無味無臭で生体親和性に優れた、加工しやすいタンパク質であることが明らかになった。また、制菌性があり、皮膚がんを誘発する紫外線を遮蔽すること、体内の脂肪などを吸着する機能があることもわかってきた。シルクの利用範囲は美容液、健康食品、コンタクトレンズ、人工皮膚などに広がっている。カイコ以外にもシルクを生成する昆虫は10万種以上に及ぶ。シルク大国日本オリジナルのビジネスも期待される。
自然を観て知る「人間力」が重要に
ウイルスは、幾何学的な凹凸を持つなど複雑な形状をしている。最近の研究で、こうした形状は表面積を大きくして吸着力を高め、効率よく細胞に取り付くためであることがわかってきた。このメカニズムに学んで、ウイルス型のナノ粒子の中に、薬剤や抗体を流し込み、治療に応用する医療用バイオ素子の研究が進んでいる。
そのほか、植物の光合成を参考に、合理的な光エネルギー変換機能を太陽電池に活用する色素増感型太陽電池の研究、コオロギに学ぶ人工知能の研究、落花生に学ぶリン回収のメカニズムなど、興味深い最新の研究事例を紹介する。
著者は、こうした自然に学ぶものづくりを推進するためには、「人間力」が重要であると主張する。まずは研究者一人ひとりが生物を観て、知って、それを踏まえた上で創る心構えが必要になるというわけだ。自然に学ぼうとする様々な分野の研究者が連携し、知恵を結集する仕組みが求められるとも指摘している。
(日経エコロジー 2006/05/01 Copyright©2001 日経BP企画..All rights reserved.)
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