典型的な「後だしジャンケン」。Aを選んで失敗した企業に、後から「あそこでBを選ばなかったから失敗した」と言っているにすぎず、「あそこでピッチャーを替えたから打たれた」と居酒屋で言っているのと同じ構造。失敗した後から評価するのは誰でもできるが合理的に未来を予測することはできない。20年後の市場環境を誰が正しく予測できるだろう?ブームが一過性なのか大きな変化なのかどう判断するのだろう?予測は当たりもするしハズレもする。当たったものが合理的で、ハズレたものが非合理的だという分析は単なる後付けだ。原油が高騰すると著者も予測していなかっただろうが「GMは早くから電気自動車を開発しておくべきだった」と言っているわけで、もし原油が下落していた場合、著者は間違いなく「無謀な電気自動車開発でリソースを食い潰したトヨタの驕り」と言うだろう。
本書は組織の7つの症状から企業の自滅を分析するが、根本的には「成功体験にしがみついて、市場や顧客の変化を読み誤った」というテーゼを7つの言葉で表現したに過ぎない。では肝心の市場の変化を見誤る原因は?一方ではトップがワンマンで人の話を謙虚に聞けないことが原因だといい、一方では官僚的意思決定が原因だと言う。ワンマンでも官僚的でも成功もあれば失敗もある。失敗した原因を後からわかりやすい組織論と結び付けるのは分析ではない。
例えば「コアコンピタンス依存症」。多くの人が家で裁縫しなくなったのにシンガーミシンはミシンを売り続け、レゴは多くの子供がコンピュータゲームに流れたのに対応できていない、と。対処法としては、コアコンピタンスの「新しい用途をみつける」や「新しいコアコンピタンスを開発する」などだそうだ。そりゃそうだろう。ビジネスエッセイならこれでいいのだが、「分析」なら内容は薄すぎる。「傲慢」や「慢心」が企業を蝕むと言うが成功していれば「自信」や「誇り」と言うのだろう。要は「ケース・バイ・ケース」であり、同じことをしても成功も失敗もする。本書が示すような単純な処方箋は、現実にはない。冷静に読めば、自滅を防ぐことがいかに困難か、また「あの企業は成功で傲慢になった」と訳知り顔で分析することがいかに「傲慢」かわかる、という意味で謙虚になれる一冊。