関西の各自治体の財政状況を分析した本書を読むと、財政再建を根本的に図るには、石原氏が提起した地方への課税自主権が不可欠なことを教えている。その歳入増加の前提には、各自治体は歳出のカットが求められるが、法人2税の減少に悩む大阪府は過去3カ年、行政サービスの低下を伴う毎年一律10%削減を実現してきた。
しかし、問題は一律カットでは、構造改革は実現できないことだ。不要な大型プロジェクトは大きくカットし、府民の福利厚生にかかわる費目は増やすという決断がなければ、財政再建によって、再び無駄な投資や支出が行われる可能性がある。大阪府泉佐野市の下水道普及率は13%にとどまる(1997年度)という。
財政再建の1つの手法としてのアウトソーシングやプライベート・ファイナンス・イニシアティブ(PFI)による民間活力の利用は、方向としては正しいことが、本書の事例でも明らかとなっている。
粗大ゴミの事前申告による収集に踏み切った大阪市が、受付係を民間委託したら、ゴミが約7割減少、人件費も1割は節約できたという。堺市でも、50歳以上になると年収1000万円を超える調理職員の給与が、給食経費の6割以上を占める状況を迎え、ついに民間委託に徐々に切り替えつつある。
もっとも、この例を含め、民間委託は本格化しているとはとても言えない。また本書のいくつかの事例からは、行政側の民間への拭い難き不信のようなものも感じられた。
地方自治体の財政赤字は、これまでも議論されてきたが、今回は、東京や大阪という大都市に波及したこと、不良債権を抱える金融機関が地方自治体に貸し出しを控えるようになったという点で異なる。もちろん、地方分権推進法が成立し、中央と地方の関係が変化しつつあることも違いである。
しかし、財政再建の処方箋は、既にあらかた書かれている。その意味では、石原都知事のように、中央政府を「怒らせて」までも、それらを実行する気概があるかどうかがカギであろう。
(慶応義塾大学教授 草野 厚)
(日経ビジネス2000/3/13号 Copyright©日経BP社.All rights reserved.)
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