おそらく全ての歴史には前史があり、今般の衆院選における民主党の勝利もその例外ではない。本書は、8.30に至った「歴史の綾」を描いて読ませる好著であると思う。
本書の白眉は、何と云っても小沢氏公設秘書の政治献金受領問題に揺れた民主党とその危機管理(民主党とても、年金未納問題で辞任した菅氏や偽メール事件での前原氏など、代表が安倍・福田政権の如くコロコロ替わったことを忘れてはなるまい)、そして解散カードを何度も切ろうとしつつもその時々に生起した様々な「歴史の綾」からついぞその機会を得ることのなかった麻生官邸を描いた第三章であろう。また、人物像としては、(1)地方を行脚し、地を這うようにして愚直に地方票の掘り起こし(田舎回り)に徹した小沢氏の姿(137頁、163頁)や(2)小沢氏の涙の記者会見を指南した田中康夫氏(124頁)そして引導役を担った稲盛和夫氏(145頁)の姿、(3)知ってか知らでか「鳩山ブランド」の価値向上に間接貢献した鳩山邦夫氏の姿(180頁)が印象に残る。
本書の記述は客観かつ公平であり、その価値は出版のタイミングではなく、あくまでも中味そのもので判断すべきと解する。