社会学・文化人類学の調査のやり方のひとつに「参与観察」という手法があるが、本書は期せずして優れた参与観察レポートとなっていると感じた。
参与観察とは、「現象が起きている現場に観察者が身を置いて、集団内部から対象を観察したり、観察者も内部の一員として体験した意識内容を記録したりして、そこに生起する事象を多角的に把握する研究方法」ということであるが、この本では「地方議員選挙を戦う」という非常にユニークな経験を自ら候補者として体験しながら客観的に記述することに成功している。
それには筆者が「完全な落下傘候補」であり「地縁がまったくなかった」という地方議員としては実に希有な(あり得ない?)状況が大きく幸いしていると思われる。
評者は映画「選挙」を大笑いして見た一人だが、本書では映画では描かれなかった舞台裏がわかってたいへん興味深かった。
筆者の人柄からか、本書の記述は平明であっさりとしていてたいへん読みやすいが、一方で映画「選挙」が描いたデーモニッシュな選挙の迫力の描写という点ではいささか不満が残った。
映画「選挙」と併読されると10倍面白いことは保証できる。