主人公の女の子の名前がさやかにかわっているところを除けば、これが「紀子の食卓」の原作本である。
日常の退屈感から抜け出したいと思う事は、さやかのような高校生でなくても誰でも考える事だろう。しかしそれをきっかけに、何気ない、ほんのささいな偶然が積み重なって、家族は大きく崩れていく。既存の家族の脆さというものもこの中に孕んでいる大きなテーマだ。なぜ人はそれぞれの家族を設計していこうと思うのか? そしてそんな家族が、なぜ外の他人から見るとこうもありふれたものなのか? そしてそんな個人にとってかけがえのない家族も、凡庸なパターンの組み合わせにすぎないという事実も興味深い・・・・
「あなたはあなたの関係者ですか?」という台詞も非常に趣がある。人がその人の関係者でなくなったのはいつからのことか? 「ここではないどこか」を人がある程度この世界の外にあるものとして認識し望むようになったのはいつからのことか? そして喪失した人それぞれの役割とは・・・・現代社会の構造をズバリと描写する、身震いするほどの快作である。