キリンジのお2人による、交互に雑誌「ダ・ヴィンチ」に連載されていたエッセイ集+インタビュー、鼎談、そして辞典までの豪華な本です。
日本人のポップなバンドはたくさんありますし、詳しくは無いのですが、彼らの書く歌詞の油断のならなさはちょっと聴いた事ないレベルです。特に日本語で歌うポップスの中では飛びぬけた存在だと思います。そんな日本語能力の高い2人が綴るエッセイ、面白くないわけがありません。以前も雑誌「TVブロス」での連載が「あの世で罰を受けるほど」として出版されていますが、この本も凄かったので今回も期待して読みましたが、その期待を裏切らない観察眼と思考のねじれっぷりを披露してくれます。
前半の交互に書くエッセイの中では、やはり身近な生活の中の飛躍できる想像力、フラットな視線、そしてひとつまみのスパイス(悪意だったり、自意識だったり)が効いたお兄ちゃんである高樹さんのラジオリクエストへの邂逅「電リク」、車を使った競技シューズ・ピッキングを想像する文章のヒロガリの尋常の無さ「靴を拾う」、ちょっとした日常がホラーに変わる瞬間を捉えてしかも可笑しい「真夜中に穴を掘る」、猿と人の境界線「ミッシングリンク」、絶対いる!こんな困った大人!の「揚げたてなので」。続いて兄とは少しだけリアルでホットな感覚を言葉に置き換えられる弟くんの泰行さんのタクシーと六本木と吉祥寺の関係「taxi driver」、プライスレスの使い方で1番考えさせられた使い方の「ウドンとネギ」、犬の遠吠えをとある感情から理解できる「僕だけじゃないですよね?」、出来るのか?魚の目からのラブソング!「魚の目」です。
そして鼎談に参加しているのが長嶋 有という作家の方なんですが、この鼎談はちょっと微妙な雰囲気がありました。なんだかキリンジのお2人も少し遠慮している感じがして、その場の空気が分からないんですが、長嶋さんは近寄ろうとするのに距離をとろうとするようにしているかのような。長嶋さんの著作を読んだことが無いのでなんともいえないのですが。ま、初対面と言ってますし、前に出ようとする人を避ける部分はキリンジのお2人にはあるような気がします(笑)
また役者森山さんとの鼎談はずっと心地よい雰囲気が汲み取れる、共通言語がある感覚が通じあっている様子が文章からも伝わってきて良かったです。面白そうな(引き出しが多そう)人ですね。
そしてなんと言ってもこの本の中のボリュームで言ったらロング・インタビューが占める割合は凄い!そして深いです。インディーズデビューから最新作までの流れを踏まえつつ、ちゃんと分かってる人がインタビュアーになっていて下調べも完璧です。思わず1stアルバムから流して聞きながら読み込んでしまいました。
キリンジが好きな方に、歌詞の妙を面白がれる人に、日本語の曲なんてたいしたこと無い(恋愛の歌ばっかりじゃないか!)と思っている人に(全然違いますし、ひねりもパンチも効いてますよ!)、オススメ致します。