1841年に出版されたエマソンのエッセイ集から“Self-Reliance”の訳書。エマソンは、同時代の作家たちヘンリー・D・ソロー、ハーマン・メルヴィル、ナサニエル・ホーソーン、ウォルト・ホイットマンらと共にアメリカン・ルネサンスを代表する作家として知られています。
本書は数多くあるエマソンのエッセイのうち一篇だけしか収録されていないので、ボリューム不足であることは否めません。しかし、エマソンの文体の複雑さを考えると、彼の著作に親しむには案外このくらいのボリュームが最適かなとも思います。それに、本書のタイトルである「自己信頼」という観念はエマソンの思想において非常に重要なキーワードとなっているので、彼の思想の精髄に親しむにはうってつけの一篇です。
過去に発刊された訳書と比べると、読みやすくなるような工夫(独自に改行や区切りを入れたり、注釈を本文中に挿んだり)がなされているのでかなりとっつきやすくなっています。日本語の選別や文意の解釈の仕方など議論の余地はあると思いますが、もともと抽象的な表現が多い作品なので、あまり深く追求しても埒が明かないでしょう。
現実における人間のあり方に鋭い批判の視線を投げかけながら個々人の普遍性・無限性を謳い上げるエマソンの言葉は、未だその魅力を失っていません。時に難解な表現に戸惑うこともあるかもしれませんが、細かいことは気にしないでそのエッセンスに触れてみてください。本書は、知っていたはずなのにずっと忘れていた自然な「自分」を見つけるきっかけになってくれるかもしれません。