複雑な機械や生物や社会を理解したり操ったりする際のコアとなる概念の一つに「フィードバック」というものがある。自動制御とは、この概念をコアにした数学理論や工学の手法のこと。本書は自動制御の歴史をさらっとコンパクトにまとめ、その意義やインパクトもからめて説明した教養書である。読むにあたって予備知識は必要ない。
本来は数学と現場の技術の話なんだろうけど、本書には数学らしい数学や生々しい技術の話は出てこない。せいぜい変数の時間変化を表すグラフや物理的接続関係を表す図が出てくる程度。完全に意義や歴史的背景を説明する読み物として割り切って書かれている。そのため、一般の教養本としては非常によいと思うし、その半面で学生やエンジニアにとっては肩透かしを食らう内容だと思う。
評者の場合、歴史的背景は本書で初めて知ったことが多かった。リヤプノフやウィーナーやカルマンは知っていたけど、初期の頃にはマックスウェル(電磁気学の人)までからんでいたなんて本書を読んで初めて知った。意外だった。技術的意義に関しては工学部や理学部を出た人やエンジニアなら大雑把には知っている話だろう。