著者の目的は二つである。一つは哲学者の名言(アフォリズム)をわかりやすく解説すること。もう一つは難解な哲学の考えを生活の中で生きる「思考の技術」としてとらえることである。そのためには体系的な近代哲学の構造を自分なりに編み変える力業を必要とするが、著者は力みを感じさせることなく成功させている。
著者によると哲学は本質と原理の「学」である。それは物語や事実の「学」よりも懐が深い。宗教や心理学ではなく、哲学的思考によって「人生」のあり方を考えようというのである。「子ども」「若者」「大人」のそれぞれの段階で抱える「自分」の問題に古今の思想家の言葉を応用しながら向かい合っている。
この著者が従来から説いてきた「欲望のルールにのっとったゲーム」としての人生という考え方も健在だが、この本はこれまでのものよりもより平易に洗練の趣を加えている。その結果、日常をしなやかに把握する哲学的なエッセイとしては大変すぐれたものになっている。