海外放浪やフリーターなど「自分探し」にはまる若者を批判する、安直な論調が増えている。イラク誘拐事件以降、その空気は強い。本書も帯を見て、そうした時流に乗った本なのかなあ、と思って手に取った。が、そうではなく、著者は若者たちを自分探しの穴に落とし込む「仕掛け人」たちに視点を当てている。私も自分探しの問題は、する若者以上にそれに引きずり込もうとする人間の胡散臭さの方が気になっていたので、著者の視点に共感するところがあった。
とりわけ、「自分探しのカリスマ」高橋歩、「絶対内定」の杉村太郎が出ていたのには納得した。彼らは「夢を見つけ、夢に進んで行け」という気持ち悪いくらいのポジティブ思考が連発されていくのが実に共通している。こういう人たちは、普通の会社員という存在を容認しないのだ。そして、彼らは自分たちの本で「自分探し」に引き込み、彼らの運営するハコでさらに「自分探し」へ没頭させる。高橋は店員もボランティアの沖縄宿泊施設で年に数千万稼いだというし、杉村の「我究館」も就活学生向け自己啓発で10万円以上の金を徴収する。「夢を追え」というワタミ、始業前にスピーチを大声で話させる居酒屋チェーン、どこも「夢があればいいじゃないか」というポジティブシンキングを使い、店員を安く使う。夢といわれて、結局搾取されてるのか。怒りを感じる。前半の「自分探し」前史は取り立てて見るべきところはないが、若者問題を考えるのに、参考になる書籍である。