まず、この本はタレント本とは一線を画している。
まったくの別ものといってもいいだろう。
久しぶりに出会った秀逸なエッセイ集である。
日常の何気ない風景を独特の切り口で表現し、それを彼女特有の”スパイス”を添えて
読者に供してくれる本作は、向田邦子のそれにも通じるところがある。もちろん本作が
一作目ということもあって、文学としての位置づけはまだ難しいだろう。しかし、私たち
がその見落としがちな日常の出来事の中に、生きる喜びを見出すその世界観と”感力”は、
新人エッセイストとしての芽を充分に予感させる。
一つ一つの文章はシンプルな文体で書かれていて、それらの積み重なりが文章全体に魂の
こもった”強さ”と”意思”を感じさせる。また、それゆえに時折見せる彼女の”弱さ”
が、読者には大きな共感をもって迫ってくるのだ。
また、本全体の構成も非常によく練られている。数か所に挿入されている詩には、彼女自身
の世界観がいっぱいに盛られており、本全体に映画のような心地よいリズムを与えている。
著者が迷い、努め、悩み、そして生きてきたすべてを、一つ一つ愛でるように紡いでいく。
今日もどこかで私たちと同じ空を見上げて、彼女はにっこり微笑んでいるのかもしれない。
読了感として、そんなことを思った。