「キミたちは自分のアタマで考えていないので、ワタシの話を聞いてまともにアタマを使えるようにしなさい」という上から目線のタイトルを平然と付けられる神経に感心した。実際に著者の肉声を聞いてみると根拠不明な自信が漲っていて成程と妙に納得した。著者には「世の中には強烈に頭の切れる人間や、常人には及びも付かない深奥まで追究する人間がいて、彼らと正面からぶつかると自分は一瞬で撃破される」という健全な恐怖が極めて希薄なのだと思う。
確かに語りや切り口は巧みなのだが、とことんまで考え抜き比較対比して検証する習性を身に付けた読者にとっては、綿菓子のような軽く呆気ない内容なので過大な期待は禁物。著者のブログがあれほどのアクセスを集めるのは、元々あらゆる対象を相対化し辛抱強く錯綜した現象を解きほぐし真偽を確かめる重い思考過程には到底ついていけない大衆が、一般論や俗論を軽くコケにして優越感をゲットできる論法を親切にも教えてくれるからではないかと思う。ニーチェの言うように思想の裏には非合理的な感情が隠れているのだ。
著者は視点を軽快に切り替えることはできても、深く突き詰めて思考する習性を持っていないと思う。例えば、少子化問題に関して平気で移民受け入れが解決策であるように言い放つが、大前研一氏や藻谷浩介氏が既に指摘しているように、日本の膨大な生産年齢人口の減少を補うだけの大量の移民受け入れは不可能であり間に合わない。欧州の深刻な移民問題の実態すら知らないのだろうか。
『デフレの正体 経済は「人口の波」で動く』また、男女双方の産休育休くらいでは出生率は回復しない。出生率の高い欧州国は例外なく重税であり、その税収を家族政策に巨額移転している。高い出生率と恵まれた育児支援の代償として低い手取りと重い負担、事実上の共働き強要があるのを書くのが良識というものである。
『消費税25%で世界一幸せな国デンマークの暮らし』『スウェーデン・パラドックス』尚、明治大学の加藤久和教授は、高齢層に偏った日本の社会保障制度は子を持たないフリーライダー(社会保障ただ乗り)の誘因となっていると示唆している。これに限らず、著者はアタマを使って書いているのだがあまり研究を深めておらず、そうした意味で大衆的な「気軽な読み物」だ。
『世代間格差 人口減少社会を問いなおす』Data:読み込み度【走り読み】社会的評価【読み手の程度による】 入手元【書店】 お薦め度【Neutral】