人生のなかばを過ぎる頃に、わが家を新築することになる人は少なくないと思う。けれども、その家を自分の手で作るとなると、その数はぐっと減ってしまうに違いない。が、まったくいないわけではない。もしも、わが家を手作りしたいと夢見ている人に手を上げてもらうとしたら、かなりの数になるのではないだろうか。この本は、そのような夢を実現してしまった人の、夢の実現の報告書と言えるかも知れない。それだけではなくて、これから夢を実現しようとする人たちのための、希望に満ちた案内書ともなっている。
著者はあくまでも家作りの素人を自認していて、素人がやることなのだから、完璧にこだわったり、あれもこれもと欲を出したりはしない。が、できそうに思ったことは徹底的に追求して、その意味では夢を限りなく広げていくことに躊躇していない。電気工事士、重機などの免許も果敢に取ってしまう姿勢に、中途半端なところで妥協しない意志の強さが感じ取れる。がむしゃらにではなく丹念に、賢く、夢を実現するために必要な過程を辿っていくのだ。
この本で特に感嘆させられるところは、どのような未知の作業にチャンレンジするときも、愉しもうとする心をけっして忘れないことだと思う。そのような心によって、どうということのない単純な作業のなかにも、創造的な夢が次から次へと生まれているのが目に見えるような気がする。もちろん、愉しむ心だけではなくて、家作りに伴う煩瑣な手続きや、大工仕事の基本、設備品の調達方法など、緻密に調べあげられた成果が、失敗談なども交えて分かりやすく報告されている。この本は、わが家を自分自身の手で作ろうと夢見るすべての人々にとって、かけがえのない親友のような存在になるのではないだろうか。