05年07月の単行本,
07年12月のノベルスを経て文庫化.全7編の連作短編ミステリです.
『腕貫』とは,テレビなどでよく見る事務員さんらの袖を覆う汚れ防止のためのカバー.
本作は,その腕貫の似合う市役所職員(らしい?)が探偵役を務める内容となっています.
さてこちら,区切るならば現場を見ずに推理をする『安楽椅子探偵』が近そうですが,
よくあるそれらとは少し異なり,探偵はほとんど顔を出さず,積極的にも関わりません.
各編とも大学生やサラリーマンなど,それぞれの物語とトラブルや疑問を抱える人が居て,
そんな彼らの近くにいつの間にか現れ,その隙間を埋めるためのヒントをチラリと出すだけ.
そして問題は一応の解決を見せるのですが,具体的にその後までが描かれることはありません.
また正直なところ,作中の情報だけで探偵が語る『真相』に辿り着くのは難しいのですが,
理詰めで語られる終盤は,「確かにそうだった」と納得させられる気持ちのよさがあります.
扱われる事件も大掛かりなものから日常の謎,そしてゾッとしそうなものとバラエティに富み,
他にも話運びの巧さや,編を跨いで場所や人が繋がる仕掛けなどは些細ながらも楽しくなります.