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腕くらべ 新版 (岩波文庫 緑 41-2)
 
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腕くらべ 新版 (岩波文庫 緑 41-2) [文庫]

永井 荷風
5つ星のうち 4.5  レビューをすべて見る (4件のカスタマーレビュー)
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商品の説明

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20歳代半ばを過ぎ、花柳界にあっては「年増」と呼ばれる新橋の二流芸者、駒代。いかにも「荷風好み」と言えなくもない、幸薄い主人公である。身請けされて一時は東北へ引きこもるが、旦那と死別し、身のやる方なく再び東京の芸者屋に舞い戻る。「ああ芸者はいやだ、芸者になれば何をされても仕様がない…」と心の内では嘆くものの、他に行き場があるわけではない。虚栄と打算の渦巻く非情な世界で、駒代が恋の「腕くらべ」に破れて落ちていく様が描かれる。
フランス自然主義文学の影響を受け、自らの小説にもその手法を具現していった永井荷風。芸娼妓とそれを取り巻く人たちの細かな風俗描写や、主観を排し冷徹な筆致で克明に人物を浮き彫りにしていく手腕に揺るぎはない。が、それにしても荷風はこの駒代という女性をこれでもかというくらい精神的、肉体的に痛めつける。周囲の人間からことごとく裏切られ、肉体を蹂躙される駒代の姿は、あまりに悲痛で、サディスティックな趣向をうかがわせるほどである。
しかし物語は、意外とも言える楽観的な結末を迎える。やや唐突で全体の調和を乱しかねない終結に、読む者はどこかほっとさせられるだろう。荷風は登場人物を最後まで突き放す作家ではない。ときには文学的意匠に背いてでも、登場人物に救いの手を差し伸べてしまう。そこにこの稀有な作家の、言いようのない魅力が存在している。(三木秀則)

登録情報

  • 文庫: 244ページ
  • 出版社: 岩波書店; 新版 (1987/2/16)
  • ISBN-10: 4003104129
  • ISBN-13: 978-4003104125
  • 発売日: 1987/2/16
  • 商品の寸法: 14.6 x 10.6 x 1.4 cm
  • おすすめ度: 5つ星のうち 4.5  レビューをすべて見る (4件のカスタマーレビュー)
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 本編で描かれているのは芸者駒代を中心とする新橋花柳界の人間模様であるが、やり方に
よってはいくらでも複雑なストーリー展開が期待できる題材(谷崎なら『卍』並みのドロドロした
人間関係を描くに違いない)にも関わらず、荷風の筆は多くの事を語りはしない。そう言うと
いかにもストーリー的に物足りないかのように思われるが、荷風の本質は谷崎のように複雑な
ストーリーを理路整然と語ることではなく、「空気」「雰囲気」を雅俗混交的な独自の文章で
我々読者に伝えることにあり、本編では今では失われた新橋花柳界の雑然としながらも情緒に
溢れた世界が十分に味わえることだろう。その意味では肝心の「空気」がいかにも希薄な
『墨東綺譚』などよりもずっと荷風の本質を表している作品と考えられる。(事実、「荷風ファン」
を自任する丸谷才一も墨東綺譚は「過大評価」と評している)。
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2 人中、2人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
当初は私家版で新橋芸者を性技で泣かす場面がたくさんあったそうです。
公刊版になっても官能描写はけっこうあって楽しめます。
もちろん、今はなき花柳界のしかも新橋芸者が(歌舞伎)役者買いをしていたというような
風俗、芸者衆のお座敷前の様子もリアルに楽しめます。
また、江戸の昔を懐かしむ老人の境地なって、この物語の時点ですでに江戸は
過去になっているということに気づいて、最初から読み直すという楽しみもあります。
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以前はいかにも古臭い文体が嫌だったが、今回読み返したらそんなでもなかった。

『さゆり』を読んだり岩崎峰子さんの本を読んだりしたためかもしれない。

芸者と芸妓の違いはあるけれど。

新橋芸者の話というのが大時代がかっていて嫌だったのだが、こういう話は江戸の戯作風の文体でなければダメなのであろう。もちろん荷風調にアレンジされた戯作風の文体だけれども。

芸者と言うと、売春婦と混合されては困るなどというけれど、この小説を読む限り、新橋芸者は役者買いはするし、お座敷に出てそのまま客と枕を交えている。あんまり売春婦と変わりないのではないか。

主人公の駒代は旦那のほか2人の男をほぼぶっ続けで相手しなければならなくなり、そうかといって手を抜くことも出来ず、ふらふらに疲労困憊したり、横浜の海坊主(骨董屋)といやいや床をともにして、散々慰み者にされたりするのである。

他にも菊千代という芸者は羞恥心のかけらもない破廉恥で、話すことといえばあちらの話のみ。箱根では見知らぬ客に口唇愛撫を施したりしてしまう。

蘭花という、元有名な医者の妻だったという芸者は女優志望でシェークスピア劇に出たいなどとぬけぬけと抜かし、松井須磨子のサロメのような裸をさらすのは嫌だといいながら、お座敷ではストリップまがいのヌードショーを演じるのである。

大正時代の作品だが、いま読んでもエロチックで過激な描写が多い。当時としてはかなりショキングな内容で、大衆紙のエログロ記事のような感じで当時の読者はむさぼり読んだのではないだろうか。

ただエロ小説で終わっていないのは荷風の飾った文体と情緒的な描写。駒代の魅力的な造形と淋しい境遇への同情かもしれない。
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