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9 人中、9人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
この小説の情報密度の高さは「演劇」そのもの,
By
レビュー対象商品: 腑抜けども、悲しみの愛を見せろ (単行本)
他のレビュアーの方も書かれている通り、この小説の情景描写の濃度の高さ、緻密さは圧倒的です。読んでいる間はそれをこなすのに精一杯ですが、読み終わるときにはストンと腑に落ち、カタルシスを味わえるでしょう。この情報密度の高さは、ひとつに、上演済みの舞台作品を小説化したことに関係があるように思います。作者は、舞台の観客が劇場で体験したイメージのすべてを、小説の読者が共有できるように望んでいるのではないでしょうか。 現実の舞台には、戯曲だけでは表し切れない細かな演技に加え、舞台装置や照明や音響といったさまざまな効果が含まれます。舞台の上の俳優が入れ替わるのを追うように、主観が入れ替わり、スポットライトが当たるように、描写がクローズアップされます。その一方で、箱庭を見下ろすような俯瞰的な視点も感じられます。とにかく演劇的です。 このように情報が凝縮された文章を、通常の小説と同じ感覚で読んでいくと、ページをめくってもなかなか時間が経過せず、もどかしく感じる方もいるかもしれません。 そこで、ウォーミングアップとして、作者の処女小説集である『江利子と絶対』を先に読まれることをお薦めします。たぶん、体感速度と小説の中の時間の経過にずれがなく、これが本谷さんの小説の基準になると思われます。その上で『腑抜けども、悲しみの愛を見せろ』を読めば、「あ、ここは演出だな」とぐいぐい読み進めること請け合いです。 読み終わり本を閉じるときには、劇場を出た観客が感じるのとよく似た満足感をきっと味わえると思います。
5 人中、5人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 4.0
本谷ワールド全開!!,
By 京太郎 (東京都荒川区) - レビューをすべて見る
レビュー対象商品: 腑抜けども、悲しみの愛を見せろ (単行本)
劇作家としての本谷の世界観が全面に出ており、登場人物一人・一人の個性が強く、話の終わり方も個人的には好きな終わり方でした。欠点としては情景描写が細かすぎるため嫌になってましまうかもしれません。 しかし、これからの本谷作品を語る上で欠かせない作品となると思うので読んでおいて損はないと思います。 本谷有希子は、作家としてはまだ日が浅いのでこれからの本谷作品に期待しましょう!!
10 人中、9人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
怪物的傑作,
By pinkman (東京都) - レビューをすべて見る
レビュー対象商品: 腑抜けども、悲しみの愛を見せろ (講談社文庫) (文庫)
タイトルに負けず、内容も文体も素晴らしくテンションが高い。文体のテンションとは何のことか説明せよ、と言われると困るが、例えば夏目漱石や村上春樹や花村萬月や林真理子やの小説に頻回に登場する、「世間というのは」「ロシア人というのは」「ジーンズというものは」「大人の女とは」みたいなウンチク話が、本書にはひとつも出てこない。作者は黒子に徹しており、その意味ではストイックだ。にもかかわらず、どのページを読んでも過剰な、暗い、重い、強い、マガマガしい、本谷有希子という人の強烈なエゴがこんこんと湧いて出てくるようで、「うはぁテンション高っけー」と、否も応もなくそう感じさせられる。映画もかなり面白いと思ったけど、これを読めば映画の方は観なくていいと思う。描写がいちいち映像的なことにも驚いた。頭の中に完璧な妄想3Dデータ(音つき、触覚つき)があり、それをなぞりながら書いているかのようで、私の場合紀行ものの風景描写とかは埋め草だと思ってトバして読む方なのに、この本の光景描写はぎょっとするほどリアルで、引き込まれた。演劇系の人だそうだが、いつか(近いうちに)映画を撮って欲しい(というか、これを自分で撮って欲しかった)。
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