新書で、しかもこのような大上段に構えたタイトルで本を書くのには、調査・聞き取りが少なすぎる。サブタイトル「東池袋のオタク女子たち」があるからといって、腐女子についてこれだけの取材源で論じるのは、乱暴である。腐女子は、30歳前後の、都市部に住む独身だけではない。既婚、地方在住、もっと世代が上・下の腐女子への取材も必要ではないだろうか。
経済格差が広がり、特に女性は雇用の条件が悪く、現実逃避をせずにはやっていられない。逃避の方法としての「腐女子化」は有効だ。かといって、腐女子は「自分忘れ」に走ってなどいない。自身の現状をよく知っているからこそ、逃避(緊急避難)をしてバランスを保っているのだ。
また、腐女子を無害で屈託がない存在として印象づけようとしているようだが、決してそうではないはずだ。屈折していることを自覚しているからこそ、腐女子になるのではないか。
格差論について、三浦展「下流社会」(光文社新書)を多く引用しているが、格差論の優れた書籍は他にも多数存在する。また、女性学・ジェンダー論・フェミニズムについて、主に小倉千加子氏の著作から多くの引用がみられるが、前後の文脈を正しく理解しておらず、自身の言説に都合の良い部分だけを切り貼りしているように見受けられる。さらに「参考文献」の欄に掲載されている小倉氏の著作は、上野千鶴子・小倉千加子「ザ・フェミニズム」(ちくま文庫)だけである。これはあまりに不誠実ではないだろうか。