もう10年以上前になろうか。立花隆氏の「脳死」を読んで衝撃を受け、氏の「脳死3部作」を初め、折に触れて脳に関するノンフィクションを手にとってきた。
「脳死」でも死ぬ間際まで聴力は残っており、脳死判定には聴性脳幹反応を含めるべきだという指摘がなされていたが、本書でもまた、脳死ではないが、いわゆる植物状態となった「遷延性意識障害」の患者が周囲の言葉を理解していた事例が報告されている。
また、救急救命医療の発達がもたらした`負の側面'として、一命をとりとめたあと家族を襲う悲劇の幕開けとなる、遷延性意識障害や高次脳機能障害の患者の増加についても詳細にレポートしている。
医療機関が進める脳ドックについては、CT,MRIを稼動させざるを得ない医療側の事情や、見つかった異変を取り除く予防手術がもたらす危険など、患者側の視点で安易な脳ドック受診に警鐘を鳴らしている。
インフォームドコンセントが定着しつつあるとはいえ、患者側が弱い立場にあることには変わりはない。まだまだ未知の領域が多い脳だからこそ生じる問題について、考える機会を提供してくれる一冊である。