脳科学を研究する科学者がオムニバス形式で脳科学の最新知見をまとめた教養書。上下二巻からなる。6人が50〜60ページの範囲でそれぞれの研究分野について紹介し,脳の分業システムや言語の由来,情報の認識システムなどについてまとめられている。330ページ程度で図示もあるが,ある程度は専門用語を理解できる者が数日以上かけてゆっくり読むべき内容。
まず,本書は初心者には難しすぎると思う。高校卒業程度の学力があれば大まかな内容は理解できるかもしれないが,根拠や研究データを紹介するために提示されているグラフなどは,ある程度論文を読み慣れている者でないと正確に理解できないように感じるし,説明が不足している専門用語がひとつの文章に多数並んでいる場合や,一般社会には浸透していない外来語が平然と用いられている部分もあって,まるで科学論文からそのまま引用したような難解な文章が随所に見られる。少なくとも,シナプスが何で活動電位が何かくらいは説明がないと一般の読者には理解不能と思う。また,担当者ごとに文章の特徴(巧拙)がまちまちで読みづらいと思うし,図に独立した脚注がないものがほとんどない上に本文が説明不足であれば,ますます理解しづらい。最もわかりやすい章は岡ノ谷一夫氏担当で,同氏は岩波から複数の一般向けの書を出している。
記載内容は最新の脳科学研究データと今後の課題,分担者が考えている仮説などであり,きちんと理解できればきわめて有用である。また,各分担者の割当てページが少なすぎて研究を詳細に説明するには無理があることも理解できる。しかし,少なくとも一般向けの書としてブルーバックスから出版するのであれば,著者間のばらつきをなくし(一人がまとめて文章を書き),ある程度はかみ砕いた文章のみにまとめる工夫と努力が必要と思う。そう言った意味で,本書は脳科学をはじめて学ぶものは敬遠した方がいい。少なくとも入門書を数冊は読んだ上で,大まかな用語を理解し,できれば科学論文などでグラフを読めるような状況で購入すべきと感じる。内容が濃いだけに,読者がきわめて狭い範囲に限定されることは残念であるし,一般向けの書としてもっと工夫すべきである。自信のあるものにとっては星4つで勧められるがそうでなければ池谷裕二氏の書を勧める。