まず、読んでいて感じたのは、その書き方の巧妙さである。
本書ではまず、「状況が悪化している」という前提を序文で示し、その後、具体的なエピソード(と言いつつ、先入観を排除して読むといくらでも別の見方ができる)で恐怖感を煽り、そして、そのまま見たのでは良くわからない図や数値を著者の説明によって「これで示された」と結論付ける。最後は、比較的穏当なところに対処法を示してみせる。とにかく、その組み合わせ方が巧妙なのである。そのため、まず、具体例は先入観を捨てて読むことが必要である(もしくは、その部分は無視する)
そうして、細かく見ると、おかしな点が沢山出てくる。例えば、3章、いじめに関する部分。「ゲームで共感性を失い、暴力的になったから」と昨今の増加を述べる。しかし、著者はその中で「いじめは暗数が多い」と認めており、となれば、昨今の増加が本当に「いじめ」増加か、と考えなければならないのに、それをせずに「悪化」と述べてしまう。しかも、そこに「昔は酷くなかった」などという単なる回顧主義を交えて(イジメは加害者・被害者のギャップが大きく、このような言動はあまり意味を持たない)。2章でのドーパミン増加にしてもそうで、ゲームをやると2倍に増えた、というのだが、「何と比較して」2倍なのかサッパリわからない。このような、単独で見ておかしなものを「エピソード」の勢いで説得力があるように見せているのである。
ゲームで暴力的になる、と言いながら日本での殺人率は下がっているなど実態とあっていないとか、影響が弱いという論文の存在は一切無視したりなども目立つ(ゲーム業界の息のかかった学者によるもの、などという陰謀論が出ることがあるが、ゲーム・ネット否定は反対に出版・新聞業界にとってライバルを減らすことになる、ということをお忘れなく)
本書は、著者の語る「物語」の根拠を一つ一つ確認しながら読むことをお勧めする。