言語脳科学と脳機能イメージングを専門にする研究者が書いた本。限定された入力情報によって想像力を鍛えることが「脳を創る」ことになるというのが基本的主張だ。
著者は自然科学者であり、いわゆる「理系」であるが、「紙の本」も「電子書籍」もともにメリット・デメリットがあると冷静に分析している。「電子書籍」が優位だといっているわけでもないし、「紙の本」でなければダメだなどと主張する守旧主義ではない。検索目的であれば電子書籍のほうに優位性があるのは当然だし、本にチェックや線引きしたり書き込みすることでカスタマイズする点においては紙の本に優位性があるというのは、経験的にみて十分理解できるところだ。冷静な議論を行うためには、著者のような整理が必要だろう。
重要なことは、「紙の本」であれ「電子書籍」であれ、活字を読む際には想像力を必要とするということだ。想像力を鍛えることで、文脈(コンテクスト)を読むチカラが鍛えられるのである。著者は、「空気を読む」という表現は使用していないが、「行間を読む」とは文脈を読むチカラのことであり、これまでの知識や経験の蓄積をつかって「想像力で補う」ことを意味している。活字を読むことの効用はきわめて大きい。
やや「教養主義的」な発言がみられるが、そういった趣味の世界の発言は脇に置いておいても、使い分けが重要という著者の主張はきわめて穏当なものだといえるだろう。「電子書籍」時代に入ったいま、とくに若者を教育する立場にある人には読んでもらいたい本である。