ちまたにある「脳科学」と言うキーワードは、怪しいものが多いと皆が感じているところだと思う。
この本を読むと、現在のセンシング技術で脳から取れる電気・磁気信号や血流などの情報を解析すると、「人間が考えていること」や「人間が環境からどういう情報を取得しているか」等が、実際のところ、どの程度分かるレベルに到達しているのかが分かる。ちまたの「脳おもちゃ」が実はしっかりした根拠に基づいたものではないということもわかる。しっかりとした根拠に基づいた応用例は、学習時間を十分に取った後に、たくさんのセンサを頭部に貼り付けて、静かな部屋で、「右手を動かしたい」と念じれば、ロボットの右手が動くレベルである。雑音だらけなリビングでおもちゃ(少ないセンサ)を頭に適当に乗せただけで、「思い通り」におもちゃが動かせるわけはない。
最先端の「今」の技術レベルが書いてあるので、2011年の今読むべきである。2012年になると、さらに技術が進んでしまって、内容が古くなる恐れがある。少しでも技術に興味がある人は、今読むべきであると思う。ただし、著者の所属するATRの研究内容の紹介が主になっているので、網羅的に情報を取得できるかどうかは分からないので、この本をきっかけに、関連する論文を読んでいくのが良いと思う。
また、将来、脳科学の分野に進んでみたいと思う、高校生も読んでみるのはいいと思う。大学で教育を受ける前の高校生にはかなり難しい内容だが、「脳科学の分野で仕事をしたい」と考えるならば、この本に書いてあることも「脳科学者の仕事」であることが分かるであろう。
なお、著者の川人光男氏は、脳科学の解析手法で世界のリーダの1人であるが、「医学部出身者」ではない。東大理学部物理学科から、阪大大学院基礎工学研究科に進まれた、工学博士である。