本書の中でRamachandran教授はまず、手や足を切断した人が、消失した手や足の部分をまだあるかのように感じる「幻肢」や、2つの感覚が入り混じる(特定の音程の音を聴くと、特定の色をイメージするというような)「共感覚」などの興味深い事例について、神経回路の観点から分析。さらには、「神経疾患を持つ患者の研究は、臨床神経学の範囲をはるかに超えて、人文学や哲学にとっても、ひょっとすると美学や芸術にとっても意味がある」と、議論を進めていく。
とりわけ興味深いのは、チベット美術、古代ギリシャ美術、ルネサンス美術など数々の芸術様式に見られる普遍性を、脳の働きと関連づけて解く、第3章「アートフルな脳」。Ramachandran教授は、芸術に見られるばらつきの9割は文化多様性から、残りの1割は「あらゆる脳に共通の普遍的法則からきている」として、具体例を挙げて、それを検証していく。
10代の時に書いた論文が科学誌「nature」に掲載されたという“天才”だけあって、その洞察力と論理展開は極めて秀逸。ぜひ一読されたい。
(日経バイオビジネス 2005/10/01 Copyright2001 日経BP企画..All rights reserved.)
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43 人中、40人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
脳と心をつなぐ最良の書,
By マクシ (東京都中野区) - レビューをすべて見る
レビュー対象商品: 脳のなかの幽霊、ふたたび 見えてきた心のしくみ (単行本)
でました待望のラマチャンドランの翻訳続編!というわけで「脳の中の幽霊」を読んだならば本書は必読です。ラマ氏は前翻訳書同様、さまざまな神経障害の症例をもとに、対比的に心の実相を浮き彫りにしてくれます。コタール症、カプグラ症、盲視(これらがどんなものかは本書を読むこと)などなど、奇妙で不可解で不気味ですらある障害が、かえって正常な心の働きのなんたるかを浮き彫りにするわけです。 このラマ氏はとんでもないことをさらっと言う人のようで、たとえば無神論の右脳と有神論の左脳を持つ患者が紹介されているのですが(どのようにしてそれがわかるかといことは、本書を読むこと)、氏はこの患者について、あっけらかんと、この人が死んだならその魂はどうなるのか、左脳は天国へ行き、右脳は地獄におちるのかなどととんでもない疑問を提起したりします。 本書にはこの他にも興味深い症例やラマ氏の独創的でとても面白い考察がふんだんにちりばめられています。元々は一般向け講演の題目だということもあり、大変わかりやすいものとなっています。彼のユーモアあふれる軽口も前著同様で、思わず笑い出してしまうこともあるでしょう。 いやほんと面白い本です。
34 人中、30人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 4.0
共感覚から言語の起源、芸術の意味へ,
By nikurou (千葉県松戸市) - レビューをすべて見る
レビュー対象商品: 脳のなかの幽霊、ふたたび 見えてきた心のしくみ (単行本)
「脳のなかの幽霊」のラマチャンドラン氏によるいくつかの講演をまとめたもの。「脳のなかの幽霊」を読んだ人で、共感覚・言語の起源・芸術の進化論的意味に興味を持った人にお勧めする。本書は「脳のなかの幽霊」と内容的にかぶる部分もあるが、著者のラマチャンドラン氏はこの本のなかで、共感覚という不思議な現象の分析をもとに想像力を働かせ、メタファーの誕生を介して、芸術の進化論的意味合いや、言語の起源にいたるまで、大胆な推測を立てる。 しかし、その大胆な推測も、実際の患者の診断や、数多くの巧みな実験を通して裏打ちされたものであり、あらためて、脳科学における実証の重要性を認識させてくれる。 2005年中に、本書のテーマをもっと掘り下げた"The Artful Brain"が刊行される予定らしい。こちらも楽しみだ。
10 人中、9人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 4.0
最新の脳機能研究は面白い、しかし前著の続編としてはやや肩すかしな面も,
By MM (北海道札幌市) - レビューをすべて見る
レビュー対象商品: 脳のなかの幽霊、ふたたび 見えてきた心のしくみ (単行本)
脳神経学者であるラマチャンドラン氏の著作を邦訳した書。脳のはらたきは部位によって決定されるため、その部分に限定した障害を持つ患者を調べることで、本来の機能が推測できる。また、たった一箇所の部位に障害が起こるだけで奇妙な症状を見せることがわかってきた。本書では、多くの患者を詳細に調べた結果、わかってきた脳のしくみや、心とは何かという人類不偏の疑問についての現代の解釈を、一般人への講演会に用いられた原稿に加筆修正した内容を収載している。前著『脳のなかの幽霊』とは異なり、難解な文章は少なく、広い読者層を対象にしていて、(知識に応じて)数時間から数日あれば読破可能。内容はきわめて面白い。たとえば、腕が動かなくなった患者が、『自分の腕は動いている』と言い張る脳のしくみや、数字に色が付いて見えるという症状の原因などが示されており、これらは最終的に、心とは何かという疑問や芸術に心を惹かれる理由にもつながるとしている。 本書の難点は、前著と比較して情報量が激減していることと前著との重複が多すぎることである。そもそも、原題は"The emerging mind(現れ来る心、または心の起源)"であり、『脳のなかの幽霊』とは独立した書として制作している。内容も、前述の如く、一般人への啓蒙を目的としているのだが、やや日本人にはわかりづらい訳(メタファーやマッピングなど)も見られる。図の頻度はややふえたものの、たとえば紡錘状回を説明すべき図中に、紡錘状回がどこを示すのかが記載されていなかったり、患者の脳機能を調べた検査写真で基準とすべき健常人の結果が示されていないなど、やや不適切な提示がされている。さらに最終章は哲学的な考察に踏み込みすぎて、それまでと比較して難解な文章も多く、当初の目的である一般人への啓蒙には沿っていないようにも感じる。 論拠となる論文が巻末に提示され客観性は担保されていることと、専門用語についての注釈が記載されているので、教養書としても読み物としても十分面白いが、書のタイトルから前著の続編として購入したならば、少し肩すかしのようにも感じる。二匹目のドジョウをねらわずに、原題に忠実に出版してほしかった。上記理由により星4つとした。
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