読み応えのある一冊だった。ページ数以上に中身は濃い。
脳の研究は、近年進歩の著しい分野である。本書は特に後半部分で、ここ数年の注目の研究成果を多く紹介していて、何よりその部分が非常に興味深かった。アルツハイマー病用のワクチン治療、体の不自由な人でも脳から直接いろいろなものを操作する技術(BMI:Brain Machine Interface)の開発など、ここ5年くらいの間でも目覚しい研究成果が相次いでいることが良くわかった。
一方前半は、脳の基本的な仕組みについて、いかにもNewtonらしい、芸術的といってもいいような見ほれてしまうよう美しいイラストをふんだんに利用して、基本から徹底解説。生物の脳が神経から進化したものであることや、記憶の仕組み、知覚の仕組みなど、丁寧に読みさえすれば、事前知識のない人でもきちんと理解できるようになっていて、素晴しい。
次々発表されている近年の新たな脳の研究の成果は、これから次々医学に応用されていくことだろう。鬱病やアルツハイマーをはじめとする脳に関係する病気に苦しむ世界の多くの人たちにが、科学の力で救われる日が来る可能性について、いくらかでも信じることが出来る内容だった。同時に、未だにほとんどめぼしい成果のない究極のテーマである、人間の心と意識のしくみを科学的に解明する挑戦が、世界の多くの科学者達の間で今や現実味のある研究テーマとして認識され始めていることも知った。
ちょっぴりお高いのだが、それだけのことはある。