「生きている状態とは?」という問いから始まり、背景をなす思想史のすばらしいレビュー、そして見事な研究成果の紹介。
エントロピー、非線形性、自己組織化、引き込み、サイバネティクス、パターン形成、散逸構造、シナジェティックス、隷属原理、カオス、現代制御理論、計算論的神経科学などの説明も非常にわかりやすい。
研究成果の紹介部分での前半は、二足歩行のシュミレーションモデルから得られた知見に関するもので、後半は赤ちゃんの行動から得られた知見に関するもの。
二足歩行モデルにおいてのキー概念は、「グローバルエントレインメント」である。その意味することは、歩行パターンは、脳にあるわけでも、体にあるわけでも、環境にあるわけでもなく、その全てに広がって存在している、ということだと理解した。重要なことは、このモデルでは歩きや走りに対応した明確な記号が制御元から与えられるわけではなく、外界・身体・神経系全てがまとまって力学系の相空間をなし、リミットサイクルによって歩行が形成され、自発的に歩きや走りが起こるということである。さらに、上位の制御系を加えることによって、障害物をまたぐなどの目的に即した行動も起こすことができる。この議論に関しては、力学系の言葉を用いてかなりはっきりと書かれていてわかりやすい。とにかく行動がシステム内で自発的に組織化され、ソウハツされるということである。
それから、「計算論vs自己組織化」や、「生得主義vs構成主義」というような二項対立を超える必要がある、という問題意識も、印象的だった。