目次からわかるように、「見る」こと、見て「知覚する」こと、見て「認識する」ことについて、関連する様々な学問分野の視点を網羅する形で総合的にまとめられている。
特に「錯覚」にはかなりのページが割かれており、視覚の科学解明の糸口として意義深い分類の試みがされている。
また最終章では進化的観点からみた視覚の意義、情動とクオリア、発達と教育のありかた、科学的な考え方の基本、など著者の広い視野をうかがわせる思索が述べられており、感動すら覚えた。
それぞれの章について参考文献もコメントと共に挙げられて科学書としてしっかりした造りとなっており、入門書とうたっているわりには相当内容の濃い本だと思う。
原著が1998年出版なのでそろそろ情報が古くなってきている可能性もあるが、ここ最近の脳科学の知見と照らし合わせてもそう古く感じなかった。最新の情報を知りたい方は、この本を土台にして、出版年以降の知見を科学誌などから追加するのもよいのではないだろうか。
原文の文体によるのか訳文が直訳調のせいなのか、やや文章がまどろっこしい印象があり、一部誤訳かもと思われる部分もあったが、丁寧に訳出しようとしている姿勢が全体から伝わってきた。訳者の方々の誠意に敬意を表したい。