脳もニューロンという物理的な素材から構成される以上、その脳が生み出す心についても、物理法則が適用できるに違いない、というのが今ホットな話題です。少し古典的なところではペンローズ(「皇帝の新しい心」)やワトソン(「DNAに魂はあるか」)らが提唱した考え方です。
その中にあって、心と自由意志に与えられている「ファジーさ」を、確率論である量子論で説明しようと試みるのが量子場脳理論です。この理論自体も、量子論が、確率論的で決定論的なものではないため、それと心の自由性に共通点を見出した、安易な仮説のような気がしないのでもないのですが、考え方としては面白いのでこの本も手にとって見ました。
が、タイトルにだまされました(前置きが長くてすいません)。この内容であるなら、脳科学研究者の端くれとして言わせて貰えば「脳と心」という言葉は使って欲しくないです。内容はシュレーディンガーの波動方程式の説明に終始しており、脳と心との関連性について本質的なところは何も得るところがありません(しかも波動方程式の説明がわかりにくく、結局ものにはできない。物理化学の教科書のほうがよっぽどわかりやすい)はっきり言って著者は脳神経科学について勉強不足な気もします。著者紹介の項目も茶目っ気を出しているのでしょうが、「文学部出の理学白紙」などとかかれると、この内容ではマイナス要因にしかなりません。心についての著作と思って読むと時間を損すると思います。