Would you like to see this page in English? Click here.

この商品をお持ちですか? マーケットプレイスに出品する
脳と仮想
 
イメージを拡大
 

脳と仮想 [単行本]

茂木 健一郎
5つ星のうち 3.7  レビューをすべて見る (50件のカスタマーレビュー)

出品者からお求めいただけます。


‹  商品の概要に戻る

商品の説明

商品の説明

第4回(2005年) 小林秀雄賞受賞

出版社 / 著者からの内容紹介

第4回小林秀雄賞(2005年度)受賞

内容(「BOOK」データベースより)

数量化できない微妙な物質の質感=クオリアをキーワードとして、意識の問題に切り込み続ける気鋭の脳科学者が提示した新しい概念「仮想」。心とは何か。どこから生まれてくるのか。小林秀雄を出発点として、漱石、一葉、ワグナー、柳田国男、三木成夫…幾多の先人の痕跡を辿りながら、近代科学が置き捨ててきた「心」の解明へと迫る、脳科学の最到達点、画期的論考。

内容(「MARC」データベースより)

数量化できない微妙な物質の質感=クオリアをキーワードに、意識の問題に切り込み続ける気鋭の脳科学者が提示した新しい概念「仮想」。幾多の先人の痕跡を辿りながら、近代科学が置き捨ててきた「心」の解明へと迫る。

著者からのコメント

ねえ、サンタクロースっていると思う? 私はこう思うんだ。
 ある年の暮れに、空港のレストランでふと耳にした、5歳くらいの女の子の言葉が、本書『脳と仮想』を書くきかっけになりました。
 子供の時には、誰でも、この世界に実際に存在するもの(現実)と、心の中に思い描かれるもの(仮想)の間の不思議なトワイライトゾーンを知っています。その薄暮の世界を抜け出して、現実の世界に適応することを私たちは「成長」と呼びます。
 しかし、大人になっても、仮想の切実さは残ります。北極にトナカイたちのいる基地などないと判っていても、それでも心の中に切実に浮かんでくるあるものの姿。心の中に感じられるそのような何かを、現代の脳科学は「クオリア」と呼びます。サンタクロースの切実さは、クオリアの切実さでもあるのです。

 子供は、無償の愛を与えてくれる存在にすがってしか生きてはいけない。(中略)クリスマスの朝に目覚めると、その人の無償の愛のしるしが下げておいた靴下の中に入れられている。サンタクロースの魅力は、プレゼントをもらえるということよりも、そのような人がこの世に存在するという仮想の中にこそある。それは、分別が付き始めた子供にとってさえめまいがするほど魅力的で、しかし決して完全なかたちでは現実化することのない仮想である。(『脳と仮想』第2章「仮想の切実さ」より)

 『脳と仮想』では、最新の脳科学の知見を背景に、この世界のどこにもないものたちを「仮想」することこそが人間の精神の自由であり、創造性の源泉であるということをやさしく解説しました。
 ますます実際的で散文的になっていく世の中で、人々はファンタジーを求めています。最高のファンタジーは、実は私たち一人一人の脳の中に潜んでいる。私たちの脳の潜在能力のすばらしさを、本書をお読みいただいた方に感じ取っていただければと思うのです。

カバーの折り返し

文学的な、あまりに文学的な脳科学者!

彼に倣い、自分の脳を仮想で満たせば、退屈死しなくて済む。ありがたい。 島田雅彦氏、絶賛

著者について

茂木健一郎(もぎけんいちろう)脳科学者。ソニーコンピュータサイエンス研究所シニアリサーチャー、東京工業大学大学院客員助教授(脳科学、認知科学)、東京芸術大学非常勤講師(美術解剖学)。1962年10月20日東京生まれ。東京大学理学部、法学部卒業後、東京大学大学院理学系研究科物理学専攻課程修了。理学博士。理化学研究所、ケンブリッジ大学を経て現職。主な著書に『脳とクオリア』(日経サイエンス社)、『生きて死ぬ私』(徳間書店)『心を生みだす脳のシステム』(NHK出版)、『意識とはなにか--<私>を生成する脳』(ちくま新書)、『脳内現象』(NHK出版)、『脳と仮想』(新潮社)、『スルメを見てイカがわかるか!』(角川書店、養老孟司氏との共著)、『脳の中の小さな神々』(柏書房、歌田明宏氏との共著)がある。専門は脳科学、認知科学。「クオリア」(感覚の持つ質感)をキーワードとして脳と心の関係を研究するとともに、文芸評論、美術評論にも取り組んでいる。出井伸之氏の提唱するソニーのQUALIAプロジェクト・コンセプターとしての活動も行っている。

著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)

茂木 健一郎
1962年東京生まれ。脳科学者。ソニーコンピュータサイエンス研究所シニアリサーチャー、東京工業大学大学院客員助教授(脳科学、認知科学)、東京芸術大学非常勤講師(美術解剖学)。東京大学理学部、法学部卒業後、東京大学大学院理学系研究科物理学専攻課程を修了。理学博士。理化学研究所、ケンブリッジ大学を経て現職。クオリア(意識のなかで立ち上がる、数量化できない微妙な質感)をキーワードとして、脳と心の関係を探求し続けている。現在では、文芸評論、美術評論に取り組むなど、新境地を広げつつある(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

抜粋

第8章 「仮想の系譜」より抜粋

 舞台の上のマジシャンは、どうにも中途半端な、奇妙な表情をしている。自分の信念について講演するような、自信の新製品を広告するような、最新のニュースを伝えるような、祝宴に集まった人たちに感謝の意を表明するような、そのような自分の置かれた文脈を確信している人たちとは違った不思議な表情をしている。自信がありそうでなさそうな、どこかはにかんだ、どこか控えめな、それでいてたくらみを心の奥底に秘めていそうな、そんな表情をしている。  ラス・ヴェガスの舞台で見た、現代を代表するマジシャン、デイヴィッド・カッパーフィールドもそうであった。透明な樹脂の箱に閉じこめられ、鍵をかけられる。白い布で囲まれ、アシスタントたちがゆらゆらとゆらす。数秒して、さっと白い布が落とされると、そこにはぴかぴかと光るスポーツカーが出現していた。ドアを開けて、カッパーフィールドがさっそうと登場した。手を広げて、どうですというポーズをした。人々が、拍手喝采した。  しかし、カッパーフィールドの顔は、自信満々ではなかった。これ見よがしでもなかった。まるでいたずらを咎められた子供のように、柔らかにはにかんでいた。  舞台の上のマジシャンは、どこか控えめである。決して押しつけがましくない。決して、自信たっぷりでもない。手錠をかけられ、ぐるぐる巻きにされ、箱詰めにされ、水の中に沈められる。炎が迫り来る。はらはらしているうちに、マジシャンが見事脱出してくる。子供の頃、そのようなトリックを「大脱出シリーズ」としてテレビの特別番組で盛んにやっていた引田天功にも、そのような一面があったように記憶する。  カッパーフィールドや引田天功をはじめ、多くのマジシャンが行っている「脱出マジック」の創始者と伝えられるのは、ハンガリー生まれのアメリカのマジシャン、ハリー・フーディーニである。  フーディーニが脱出マジックを思いついたきっかけは、精神病院の閉鎖病棟に強制入院させられている患者を見たことだったという。そのことを知った時に、初めて、私はマジックと言う仮想の芸術の起源にあった切実さの核に触れたような気がした。  私たち人間は、物理法則からは決して逃れ得ない。ぐるぐる巻きにされて箱に入れられ、海の底に沈められてしまえば、決して逃げ出すことなどできないことを誰でも知っている。おそらく死んでしまうであろうことを知っている。精神病院に強制入院させられてしまえば、なかなか逃げ出せないことを知っている。刑務所に入れられれば、しばらくは出てこれないことを知っている。いくら念じて見ても、物理法則を無視して壁抜けなどできないことを知っている。  逃げ場のない状況に置かれているのは、箱の中に監禁されたり、刑務所に入れられたり、そのような特殊な環境に置かれた人間だけではない。自然の中で、社会の中で、一見自由な空気を吸っているかのように見える人間もまた、因果的な物理法則から逃れ得ないという点においては、まったく同じ状況に置かれている。因果的法則がその根底にある、生老病死の必然から逃れることはできない。閉鎖された空間に拘束された患者を見たフーディーニは、そのことを、一瞬に悟ったのではないかと思う。

‹  商品の概要に戻る