この本は、自然科学が直面してきた脳と心の問題についてかかれたものである。
クオリアという言葉をキーワードにして、固有時間、理解、意識などについての議論を進めていく。
自分の信念や情熱に基づいて大胆な仮説を設定し、現在の生物学の研究手法では
脳と心の問題は絶対に解決できないと説く。
正直に感想を言うと、非常に退屈な本であった。途中はむしろ苦痛ともいえた。
例えば、抽象的な言葉を定義しその説明が要所要所で出てくるものの、
説明が毎回一辺倒で、いつまで読み進めても理解が一向に深まらない。
仮説を設定し理由を挙げてそれが必然的であることを力説するときでも、
議論が非常に軽薄、独善的であり、短絡的過ぎてこちらが不安になるほどである。
しかも、肝心なところになると「まだそれは分からない」と逃げてしまう。
でも、著者は自信満々なのだからどんどん進んでいく。
その結果、全体的に非常に雑な議論になっており、素直に受け入れられることは少ない。
自分の考えをまとめるつもりで書いたメモ用紙のようなものに成ってしまっている。
いくら一般向けの啓蒙書であっても、これほど完成度が低いと著者の信用に関わるのではないか。
とはいえ、著者の熱意は感じられたし、この本がとりあげている主題の奥深さを知れたのはよかった。
このころはまだ著者は若く思索も浅かっただろうから、最近書かれたものではどういう内容のものになっているのか
ぜひ読んでみたいと思っている。