この手記が傑作であることは自明であるとして、おせっかいなことは百も承知で参考意見として二つ。
1・ゴビ砂漠で二人の命を奪った病気(足のむくみから始まり、やがて死に到る)は、おそらくビタミンB1欠乏症である脚気である(だからもっと早めに蛇を食べ始めてたら二人は死ななかったであろう)。
2・もともとは冒険ノンフィクションとしてではなく、スターリン体制を告発するために出版された本であるということを念頭に置いて読んだ方がよいであろう。
この本が出版された1956年は、共産主義とスターリニズムの暗黒面は国際社会にはまだあまり知られていなかった。著者が住んでいたイギリスはとりわけ左翼勢力が強く、おそらく著者は「反共主義者」としてさまざまな嫌がらせや非難を受けたものと思われる。今となっては信じられないが、当時はそういう状況であった。だからこそ著者は大踏破行よりも反ソ・反スターリンに力点を置いたのであろう。以上。