題名がなかなか強烈だったので、気になってはいたけど、読むことのなかった本。
今回読んでみて、その人間描写の細かさと同時に、題名の持つ皮肉さに驚いた。
「ブール・ド・スイユ=脂肪の塊」、それは娼婦の呼び名でもあるのだけど、同時に彼女を蔑んでいるブルジョワ階級のことでもある。
娼婦は身体が「脂肪の塊」だけど、上品な方々は心が「脂肪の塊」だ。
それは、食べるシーンが異様に多いことからもわかる。
彼女の持っている食事を食べ尽くし、暇な間も放蕩し、人の不幸や、人そのものを食い物にする。
それなのに、彼女を蔑んで、弁当を欠片も分け与えない。
なんとなく、「千と千尋の神隠し」であった、両親がごちそうを食べながら豚になっていくシーンを思い浮かべた。
人間の醜悪さと食欲には、なんとなく通じるものがあるように思う。
身分ではない、人間の価値というものは。そんな風に思わせられる中篇。